坪井香譲の文武随想録

時に武術や身体の実践技法に触れ、時に文学や瞑想の思想に触れる。身体の運動や形や力と、詩の微妙な呼吸を対応させる。言葉と想像力と宇宙と体の絶妙な呼応を文と武で追求。本名、繁幸。<たま・スペース>マスター

2014-01-01から1年間の記事一覧

〈足の内〉にこそ原郷への道が ―〈うづたま〉によって気付かされた―・前編

ある日、稽古の途中で… 今年、2014年10月4日(土)の午後、けいこ場のたま・スペースで少数の人たちと武道―やわらげ―の稽古をしている最中、一人が、手の内と足の関係はどうなのかな…?と、つぶやくのが聴こえました。「手と足…」その瞬間、私はそう…

やわらを入れる(第二部)『もうひとつのからだへ』【手のひらと指が世界に接する】の章―〈3〉

リルケの直感と空手道 ここに出てくる〈天〉とは何だろうか。たとえば孔子が、期待していた最愛の弟子顔回に若くして先立たれ、思わず「〈天〉我を見捨てしか」、と嘆いた〈天〉。五十にして天命を知るの〈天〉…。〈天〉は、私たちが俗に神というニュアンス…

やわらを入れる(第二部)『もうひとつのからだへ』【手のひらと指が世界に接する】の章—〈2〉

〈手の内〉を明らかにする… 我国の剣術では、両手で剣を把るのが通常である。その働きを〈手の内〉と言って、とても大切にする。 剣の柄を、布巾を絞るように握る、という教えもあるらしいが、これはおそらく、ごく初心のためのものだろう。大体布巾や雑巾も…

やわらを入れる(第二部)『もうひとつのからだへ』【手のひらと指が世界に接する】の章—〈1〉

手首で弟子と女友達をチェックする 上半身を左右に大きく振りながらピアノの弾き語りをした盲目のソウル・ミュージックの巨人レイ・チャールズ(1930〜2004)は、多くのポップ・ミュージックの人気者のように、大活躍しながらも、個人的には様々な苦悩にさら…

やわらを入れる(第二部) 『もうひとつのからだへ』【赤児とマイケル・ジョーダンと仏陀の舌 】の章 ‐ 〈3〉

美しさは味が源になっている 美(うつくしい) 義(ただしい) 善(よい) 美は、羊(ひつじ)を正面から見たところと胴体を上から見たところを組み合わせた象形文字である(白川静著『字源』以下同) この美しい立派な姿の羊は、選ばれて祈りや儀式の際、犠…

やわらを入れる(第二部) 『もうひとつのからだへ』【赤児とマイケル・ジョーダンと仏陀の舌 】の章 ‐ 〈2〉

仏陀、粥を食す ― スジャータの話し 長い歴史を通して、人類の多くに道徳や生き方など、たとえ変形されたり、都合よく解釈されることがあったとしても、精神上の価値を支える柱になってきた思想を生み出した者達。 釈迦、キリスト、ソクラテス、孔子、老子等…

やわらを入れる(第二部) 『もうひとつのからだへ』【赤児とマイケル・ジョーダンと仏陀の舌 】の章 ‐ 〈1〉

舌を出して身を沈める バスケットの神様と謳われたマイケル・ジョーダン(1963~)は、そのプレー中の振る舞いに非常に特別なものがあった。それは、その長い舌を出しながらの動きである。取り囲んでくる相手チームの何人かをかわし、抜けようという時に舌を出…

番外編ーオーストラリアから

こんにちは 今、オーストラリアの原野にいます。地球という玉の反対側に来て、「うず玉」をみんなと一緒に回しています。 坪井香譲

やわらを入れる(第二部) 『もうひとつのからだへ』序章【 もう一つの〈からだ〉の見方へ 】 ‐ 〈2〉

万葉集と武術と医術 〈想像力〉〈言葉〉〈からだ〉…… 本書のテーマは〈からだ〉に関することである。けれど通常の〈からだ〉とは、おもむきがちょっと異なって、いつもこの三つが互いに交差していくものとしてとらえられている。 イスラムの哲学者アビセンナ…

やわらを入れる(第二部) 『もうひとつのからだへ』序章【 もう一つの〈からだ〉の見方へ 】 ‐ 〈1〉

今回から予定著書『もうひとつのからだへ』の序章、【 もう一つの〈からだ〉の見方へ 】 に戻り、連載を続けます。 行き詰まり、ハンディを負ったからだから… フェルデンクライス・メソッドという身体技法がヨーロッパ、アメリカ、日本等でも盛んに行なわれ…

やわらを入れる(第二部) 『もうひとつのからだへ』【 円相が呼吸する 】の章 ‐ 〈4〉

オノ・ヨーコ、円の発想で危機を乗りこえる 小野洋子(オノ・ヨーコ)は、殺されたジョン・レノンのメモリアルプレースとして写真のようなモニュメントを作っている。ニューヨークのセントラルパークの一角の地面に円い形が設えられ、中に〈IMAGINE〉と記し…

やわらを入れる(第二部) 『もうひとつのからだへ』【 円相が呼吸する 】の章 ‐ 〈3〉

武術の極意に活きる円相 太極拳では図版で技の手順を示す際に、技を示している人体の周囲に円を描いて囲んでいることがある。 そうすることで型やその変化や全体のバランスをよりよくとらえられる。左右、前後、上下など、より的確にとらえられやすくなる。…

やわらを入れる(第二部) 『もうひとつのからだへ』【 円相が呼吸する 】の章 ‐ 〈2〉

円は空海、親鸞、日蓮にもあった 円相は人の身心や行為や技やコミュニケーションに深く関わり得る形だ。私は、敢えて人間の存在の様式、あるいは構図に関わると言いたいくらいである。 人類と円相との関わりはおそらく月や太陽の円輪に発するかもしれない。…

やわらを入れる(第二部) 『もうひとつのからだへ』(新著予定タイトル)

今回から何度か、私の予定の著書(本来は2013年秋刊行が、出版社(K社)の都合で取り止めになったもの)の中から抜粋して載せてゆきます。予定の著書とは内容も順序も少し異なることになると思いますが、よろしく。 なお、最後の写真、動画はきわめて意味の…