坪井香譲の文武随想録

時に武術や身体の実践技法に触れ、時に文学や瞑想の思想に触れる。身体の運動や形や力と、詩の微妙な呼吸を対応させる。言葉と想像力と宇宙と体の絶妙な呼応を文と武で追求。本名、繁幸。<たま・スペース>マスター

2011-01-01から1年間の記事一覧

ごあいさつ

身体技法「∞気流法」を世に問いはじめてから三十年余になります。 まことに遅々たる歩みとはいえ、国内にとどまらず、フランス、ドイツ、ベルギー、オーストラリア、ノルウェイなどで少しずつ稽古の仲間も増え続け、発展してきています。 二年前には京王•小…

やわらを入れる―共感の力へ《8》

リラックスと指揮者小澤と甲虫 元ウィーン歌劇場の指揮者だった小澤征爾氏が、若い音楽家のためのセミナーで指揮法を伝授するビデオを見たことがある。二十年も前のものだが。 楽団を前にして、指揮台に立ったその学生が、頭上に振り上げたタクトを、勢いよ…

共感の力(改題・〈やわら〉を入れる)《7》

合気道や〈ひかりの武〉の稽古をしている中に、バッハの音楽に目覚める。 レストランのマネージャーの仕事に打ち込んでいると、いつの間にか体術の技倆が上がっていた。(連載《6》より) なぜそうしたことが生じるのだろうか。どんな過程がそこにあるのだ…

共感の力(改題・〈やわら〉を入れる)《6》

空間は私たちの呼吸器だ 物理的空間、その中に含まれる空気の汚れも清浄も私たちは共有している。そして言語の共有性。二つは時にずれ合い、時に重なり合う。 前回でそのことを書いた。 そうした共有性のセンスこそが、人間の活々した営みの根源にある。 物…

「〈やわら〉を入れる 」《5》

揺さぶられた言語宇宙 この連載で本来続けてゆくべき「文武」のテーマの文が中断し、「緊急寸言」と銘打って不規則な載せ方等もした。前回は本来のテーマに近づけたが…。 実は、なかなか書けなくなってしまっていた。先に練った大体の構想はあるので、それに…

「〈やわら〉を入れる 」《4》 English ver.→see PDF

English ver.→ english.03.05.2011.pdf 〈龍〉の幻想と現実 私たちが生を営む日常の場の時間と空間がザックリと切り裂かれたままになっている。その大きく開いた傷口はピクピクと未だにひりついている。膿み、瘴気を発し続けている───。 ギリシャ神話の怪物…

「〈やわら〉を入れる 」《3》

English ver.→ english.07.04.2011.pdf ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 原発の事故あるいは事件は、依然として事態が不透明である。いつもクリアーに合理的に考え処理している筈の科学者や技術者が、底知れぬ沼地に入ってもがいているようだ。二回ば…

緊 急 寸 言・その《2》 English ver.→see PDF

English ver.→ english.30.03.2011.pdf Deutsch ver.→ deutsch.30.03.2011.pdf 本来の「文武随想録」の続きを載せる前に、もう一度「緊急寸言」を出します。感じていることを、今、発表した方が意味があると思うので…。 地震と津波発生から約二十日間、今も…

緊 急 寸 言      English ver.→see PDF Deutsch ver.→see PDF

English ver.→ english.23.03.2011 .pdf Deutsch ver.→ deutsch.23.03.2011.pdf ブログ「文武随想録」の次を書いている最中、地震がきた。──それから十日。(『やわらを入れる』の続きは次回にまわします。) 言語道断。言葉もない。声を失ったその声の持主…

「 〈 やわら 〉 を入れる 」 ━ 「 武道は愛 」とは? 《2》

剣と「和─やわら」がつながる 「俺が本当に修業したのは剣術ばかりだ」と、実は「やわらを入れた」として江戸庶民に喝采を受けた、と竹内氏がいう勝が言っているのである(『氷川清話』)。 彼は、遂に一生真剣をもって人とわたりあうことはなかったが、暗殺…

「 〈 やわら 〉 を入れる 」 ━ 「 武道は愛 」とは? 《1》

竹内敏晴氏と柔術 一昨年亡くなった演出家の竹内敏晴氏の父方の祖父に当る人は柔(やわら)、柔術の達人だった。どんな風だったのか、去年出版された竹内氏の語り下ろし自伝『レッスンする人』(藤原書店)に、その一端が出てくる。以下坪井が要約。 …ある時…