※以下、最近のエッセイから引用します。(著者)
ヒトが「人間」になり始めた直立二足歩行という原点。
その態勢に戻ってみてこそ、現在の私たちの身体と心の活動が鮮明にとらえられる。

あらゆる動作や生活の中の心身の活動を支えている、次にあげる「身体の文法」の三原則は、「人間」の原点「直立二足歩行」に遡れる。
〈身体の文法〉
人間のあらゆる動作、活動に通底する原則を〈身体の文法〉とし、それに順じて行なってゆく稽古法.
何度も繰返してゆけば、やがてさらに味わいが深まりさまざまな場面(日常の身心活動、専門的な身体技法の場や表現法)に応用できる.
身体の文法・基本三則
- 身体にかかってくる「重さ」に 沿えば、「重さ」によって体は活かされる.
- 動作は主として波状、曲線状、螺旋状に.
- 呼吸は生命力の源泉であり、様々な行為を支える原リズムでもあることを自覚する.
さまざまな動作や生活の中の営みは概ね、多かれ少なかれ、上の三つが渾然一体となって支えている。
(たとえば「椅子に腰を下ろす」「立ち上がる」という動作。「人の話しを受け容れる気持ちで聞く時」 反対に「拒否感を持って聞く時」。「斧を振り上げ、振り降ろして薪を割る時」…)
身体技法の多くに「型」があって初心者が学ぶための実践上の叡智になっている。東洋でも西欧でも変わらない。しかし、どんな「型」でもすべては人間の直立二足歩行という原点、型のそのまた元の型に遡るのではないか。私は三十年以上前にそう発想したものだった。
そうするうちに、私は、今まで一般にはあまり意識されてこなかった、ある、大変重要な身体の部位とその働きに、あるきっかけで気付いたのだった。
「よぼろ」こそ 直立二足歩行という起源に潜む生きた叡智の場である
「よぼろ」は膝の裏にあたる窪み(膝窩)である。平安末期頃までの呼び方で、それ以降は「ひかがみ」と呼ばれている。なぜ私が現在用いられている「ひかがみ」という呼称を用いずに、より古い「よぼろ」を用いるかの理由については別の機会に譲りたい。また、手の肘の裏側も肘窩(ちゅうか)と呼ばれるが、昔は「手よぼろ」と称すこともあったらしい。左右の手足にある、四つの「よぼろ」が大切なのだ。
これまで、ほとんど省みられなかったのだが、「よぼろ」こそ、全身をもって立ったり、移動したり、様々な高度な精妙な技のようなことをする場合、また坐禅や正坐のような瞑想や静かな体勢でさえ、とても大切な鍵となる。*2
私が思うにヒンズースクワット、中国の立禅、相撲の四股や鉄砲という基本訓練、あるいは合気道などの極意にも「よぼろ」は深く関わるのである。おそらく他の夥しい身体技法にも。但し、関わっているからといって、それを確実に意識して用いるとは限らない。自ずと用い、我知らずということも多い。しかし、意識する、しないの差はとても大きい。
私は「よぼろ」に気付いて用い出し、大きな実践的効果を産み出すのに自ら驚嘆し続けているのだが、考えてみると、「よぼろ」の働きにはっきりと気が付いた2024年のその時迄、40年間も自ら工夫して多くの人々と行なっていた型に、それを用いていたのだった。しかもそのことをほとんど全く意識していなかったのである! だから「用いていた」という言葉も的確ではないが…。

[コラム] ヒトの原点•直立二足歩行と「身体の文法」
直立二足歩行によって、人間はそれまでと異なった空間との関係に入り、手指の自由を得、道具と火の使用を始め、想像力の発展と言葉の使用が可能になっていった…とされる。
「身体の文法」からそれを見てゆこう。直立二足歩行によって①の重力と全身の関わり方が大変革され、体の前面は前方空間に晒されることになった。②の波状、曲線状、螺旋状の動作は螺旋という基本は変わらなくても、手の動作の多くは下の地面との関係でなく、空間中にある物や空間そのものとの中でされるので螺旋状になる度合いは相当異なる。③の呼吸については、まず直立姿勢によって様々な呼吸に関する体構造に変化がもたらされ(変化したから直立姿勢は安定したものになる)、また、他の哺乳類は四肢の動作一つに応じて一度の呼吸しかできないが、人間のみは呼吸の回数と動作の回数は異なってなされ得る、という研究もある。
ともあれ、身体の文法・三原則は、こうして直立二足歩行に端を発すると言えるだろう。

「よぼろ」の実感のためのボディ・ゲームを紹介します。★足場のよいところで安全に配慮して行いましょう.
実際には、「よぼろ」には精妙な特異点の把握が大切ですが、写真ではお伝えできないので大まかに「膝裏」としています.
受手は両手を伸ばして壁に付けしっかりと立つ.
①仕手は後ろから受手の腰のところに両手を当て受手を壁の方へ、ジワリとしっかりと押してゆく.多くの場合、受手は頑張ってもこらえきれず体勢を崩してしまう.

②今度は、受手は左右の膝をリラックスして膝裏に窪みを作るつもりで立つ.この状態の受手を仕手が相当な力で押しても容易に崩れることはない. ※仕手が二人か三人になっても可能な時がある.
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パリで ∞気流法 - BODY ONTOLOGY(存在学)のセミナーを開催、「よぼろ」を初公開しました。
2025年5月31日(土)〜6月1日(日)
パリ20区 スタジオ・オルトー
講師 / 坪井香譲(∞気流法創唱者)
スタッフ / 佐藤響子 リュック・ブランシャール イオネル・ペリエ 通訳/ ララ・サラバッシュ 山本賢藏
Stage Printemps 25.pdf - Google ドライブ



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ハノーヴァー・セミナー(6月7日〜8日)
