坪井香譲の文武随想録

時に武術や身体の実践技法に触れ、時に文学や瞑想の思想に触れる。身体の運動や形や力と、詩の微妙な呼吸を対応させる。言葉と想像力と宇宙と体の絶妙な呼応を文と武で追求。本名、繁幸。<たま・スペース>マスター

やわらを入れる 〈号外〉・ビデオ編

「翼」号外3
〈ビデオ〉―「翼」で活かす武道の技と足捌き―その一例

 「翼」をもつこと、「翼」を活かすこと、それはこれから少しずつ解いてゆきたい。
 そのごく一端として、わたしがずーっと続けてきた〈柔術や剣術、合気道〉の中で、「翼」をもつことで可能になった足捌きと技を紹介する。
 163cm、62Kgの私が行なっている真剣な技…いわゆる力では絶対できない。速度も大切だがそれだけでは充分でない。身を浮かせること…私たちはそれを〈吊り身〉といっている。この身体が天空から吊り下げられ、吊り上げられている状態こそ、〈重力〉を最も有効に自在に活かすことになるのだ。「翼」をもつことの展開の実例になる。
 ここに紹介する足捌きは、我国の伝統舞踊の〈さんさ〉の足捌きに似、また、ラテンのサルサのステップに通じる。もちろん、本来は、床に置いた障子の紙を濡らしておいて桟のところを歩いて紙を破らない訓練をしたという古流の空手や、私が何度ものこの連載で触れてきたように〈天の浮橋に立つ〉という合気道や、中国武術などにも、そうした足捌きは、名前は異なっても共通するものがあるのだ。
 こうした足捌きは、全身全霊を統一した結果、「翼」に目覚めてこそ可能になる。それを舞や武道の技に活かした場合である。武道や舞に終らないことはもちろん、これは本質的な人間の自由に係わることなのである。身体を携えて生きる人間の自由の相……少しずつ解明してゆきたい。今回はビデオを通して動きを見、いろいろと想像して下さい。



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平成二十四年七月二十五日