坪井香譲の文武随想録

時に武術や身体の実践技法に触れ、時に文学や瞑想の思想に触れる。身体の運動や形や力と、詩の微妙な呼吸を対応させる。言葉と想像力と宇宙と体の絶妙な呼応を文と武で追求。本名、繁幸。<たま・スペース>マスター

再開の前に…

 昨2011年8月末以来、ブログ文武随想録を休んでいました。
 この間、9月末から10月中旬までフランス南仏の村とパリで講習を行いました。


 10月末には東京港区のホテルで、私の卒業した早大心理学の同窓会があり、頼まれて、簡単な講習を2時間半くらい行い、幸い友人達はとても喜んでくれました。


 そして、何よりも11月20日に青山のウィメンズプラザのホール(青山学院の前、国連大学の傍)で、『からだとことばの想像力〜共感の時代へ』というテーマで、イベントを行ったことでした。

 とくに今回は、はじめて、これまで稽古にも参加してこられた詩人の谷川俊太郎さんを迎えたことが大きかったのですが、後に紹介している舞台上のパフォーマーの練達の専門家の方々以外にも、稽古の仲間が舞台上で、またスタッフとして、一人一人が各々大車輪で支えてくれました。ここで改めて深く感謝したいと思います。


 春から企画を立ち上げ、覚和歌子さんの勧めでこの、とても感じのよい会場を予約することができ、何度もミーティングしたり、リハーサルしたり。その甲斐あって、また、何よりも皆様のお蔭で、当日は230名が集り、ほぼ満員となり、内容も、とても充実した、意義あるものとなったと思います。それは単に内向きに稽古法としての〈∞気流法〉にとらわれるのではなく、人間の身体と言葉の活動の原点に触れようとするものだったと思います。客観的に評価は色々あると思いますが、少なくとも私たちの現在のもっている能力や努力、工夫はこの段階ではだいたい出し切った感じがしています。

 終わってからは50人集ってのゲスト、スタッフのシャンパンパーティー(ここ数年、このパーティーを目指して、私、佐藤、また∞気流法の稽古に来日するフランス人達が手荷物として運んだので、防腐剤の入っていない、美味しいロゼ・シャンパン!)。イベントのチラシを作成した芝野浩史氏、このブログをテクニカルな面で支えてくれている吉川氏、高橋氏夫妻、石原敬三氏(めるはーば)、∞気流法に取り組みながら自らタイ式マッサージの修業をし、治療所を開いている東とよみさんなど、大阪、名古屋からも熱心な仲間が駆けつけてくれました。皆さん、ありがとう。


 さて、このイベントのうち、私の講演「掌と心と言葉 ー ヘレン・ケラーの目覚めから」のビデオを、このブログで紹介してゆきます。ここからまさに〈文武〉のつながりのヒントが自ずと浮び上がってくると思います。
 この講演は∞気流法に全くこだわらず自由に言語と身体と世界について、非常に大切なテーマを扱っているつもりですが、短い時間だったので、いくつか補充したいと思いますので、映像を見た後、ぜひ読んで下さい。そのあとにこれまでのリズムで〈文武随想〉を続けたいと思います。


講演−1

坪井香譲「掌と心と言葉〜ヘレン・ケラーの目覚めから」-1


講義の中で皆さんに見てもらったのは、有名な映画『奇跡の人』[1962年作...アン・バンクロフト(教師サリヴァン役、アカデミー主演女優賞)、パティ・デューク(ヘレン・ケラー役、助演女優賞)等出演]の場面ですが、残念ながら版権のことがあり、このブログではお見せできません。
 数分足らずのシーンですが、代用に写真を何枚か用いて補います…。

 ある日、反抗して水をひっくり返すなど暴れるヘレンを、サリヴァンは庭に連れ出して、井戸で水を汲み出します

 ふと、ヘレンは掌で流れ落ちる水を受ける
 すかさず、サリヴァンはヘレンの指に指文字で〈水〉だと伝える
はっとするヘレン ― 水と〈指文字〉の一致…
一歳半までしゃべっていた”water"という声が出てくる! 言葉と水が一致した瞬間!
指文字で確認する…
分かったのね!
 掌で地面をたたく…「地面( the ground )! 」

こうして世界は開かれた
「母」も、そして「先生」も…言葉と世界が今はじめて呼応して立ち上がった…


(なお、このシーンはDVD映画『奇跡の人』を見るか、時々Youtubeに出たりするのでぜひご覧下さい)


つづく


平成二十四年一月十五日